大剣のエーテル

震えた声で呟くと、それを聞いた大男が、ニヤリ、と不気味に笑った。


「俺のことを知っているようだな、お嬢さん。どうだ?禁忌を犯すことを許された魔法使いに命を狙われる気分は…?」


ぞくり…!


恐怖で体がすくむ。

大男に答えることもできない。


(…まさかダーナは、殺生が許されたエーテルの団長に私たちを始末させることで、自分が罪に問われないようにするつもり…?!)


すべての企みを察した私の胸に、悔しさと焦りが込み上げる。

その時、ランバートが隣で小さく呟いた。


「やっぱりこの屋敷にいたか。…通りで、玄関にやたらデカイ足跡があると思った。」


(…!ランバートは、初めから気づいていたの…?)


その時、大剣を軽々と肩に担いだ大男は、私たちに向かって高々と言った。


「さぁ、大人しく俺の手にかかってあの世にいきな…!」


殺気を放つ大男とダーナのせいで私たちが入ってきた扉は塞がれているし、この部屋には隠れるところも、逃げ場もない。


(…もう、ダメだ……!)


目の前に現れた死神には、どう抗っても敵わない。

恐怖と絶望感から、ぎゅっ、と目を閉じた

その時だった。


「…あんたが“エーテルの団長”、ねぇ…」


死と隣り合わせになっている状況下で、少しの焦りも感じさせないランバートの声がした。

ふっ、と目を開けると、ランバートは大男を凛として見上げ、顔色一つ変えていないように思える。


「…ランバート…?」


私が小さく彼の名を呼ぶと、ランバートは優しく私を床に下ろした。

そして、いつもの穏やかな笑みを浮かべて私を安心させるように口を開く。


「ノアちゃん、いい子で待っててね。“護衛の役目”はちゃんと果たすから。」


「え…?」

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