大剣のエーテル

するとイヴァンさんは、はぁ、とため息をつきながら私に声をかけた。


「気にするな、ノア。ルタは人見知りなんだ。初対面のやつには必ず威嚇する。」


確かに、警戒されている感じは伝わってくる。

ランバートも、イヴァンさんの言葉に「そうそう。」と続けた。


「冷たい物言いも天邪鬼なだけだから。本当はルタも、ノアちゃんと話したいって思ってるよ。素直じゃないだけで。」


「…性格がひねくれてるのは認めるけど。別に、この子に興味はない。」


とどめの一撃は、ドッ!と心に突き刺さった。

人見知りのせいで言っているわけではなく、本当に私に興味がないようだ。

いや、私というよりも、他人に興味がないらしい。

ルタさんは、カルテに視線を落としながら話題をさらり、と変える。


「そういえば被害者のことだけど。傷の形状から、男性を襲ったのは俺が追っている“人斬り”と見て間違いない。」


「人斬り…?」


ルタさんの言葉につい呟くと、イヴァンさんが微かに眉を寄せながら言った。


「この町では、無差別に町民が斬りつけられる人斬り事件が多発していてな。ルタが任務として事件の調査を行っているんだ。」


私は、彼の説明に納得しつつ考え込んだ。

人斬りという単語には聞き覚えがある。確か、町の人たちが“また人斬りが出た”と騒いでいた。

と、その時。

私はイヴァンさんの言葉にある違和感を覚える。


「人斬り事件の捜査が任務なの?エーテルの任務は一派の殲滅なんじゃ……」


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