大剣のエーテル
2人が声を発したのは、ほぼ同時だった。
「ちょっと、何言ってんの。勝手に子守を任されても困る。この子はランバートの連れでしょ。」
ルタさんが冷たく反撃したが、ランバートは柳に風と言わんばかりに、しれっと言葉を続ける。
「いつ一派が現れるか分からない町中にノアちゃんを連れていくわけにはいかないよ。ノアちゃんは現場に行っても幻夢石に触れないわけだし。ここでルタの側にいてもらったほうが安全…だろ?」
(た、確かにそうだけども…!)
ただでさえコンクリート並みに厚い心の壁を感じるルタさんと2人っきりになるなんて、もともと人とコミュニケーションをとった経験が少ない私にとっては地獄に等しい。
(待って!置いていかないで…!)
その時、イヴァンさんがランバートを視線で指しながら付け加えた。
「第一、ランバートはトラブルを引き込む天才だ。こいつと同行する犠牲者は、なるべく少ないほうがいい。」
「まぁ、確かに。」
当然のようにさらり、と言ったイヴァンさんの言葉に、ルタさんも深く納得している。
そして、「ひどいなー」と苦笑したランバートは、私に向かって優しく声をかけた。
「んじゃ、現場は任せて。行ってくるね、ノアちゃん。」
(あっ…、、!)
引き止める間もなく、ランバートとイヴァンさんはさっさと診察室から去っていく。
ぱたんと閉められた扉は、まるで一生抜け出せない監獄の檻のように見えた。