この愛、スイーツ以上
ドレスは今日仕事帰りに取りに行き、明日の17時に井村さんが美容院まで迎えに来てくれることになっている。


「ただいま」

「おかえりなさい。お疲れ様です」


二つの取引先を訪問した二人が帰社したのは15時を過ぎたところだった。


「吉川さん、お土産です。ひと休みして、みんなで食べましょう。コーヒーを淹れてください」


私がコーヒーを応接室に持っていくと安田さんがアイボリー色の箱を開けていた。そこに入っていたのはシュークリームだった。


「わあ、シュークリームなんですね」

「はい、この店の前を通ったら副社長が買いました」

「ここのは美味しいんだよ。吉川さんに食べさせてあげたくてね。このシュークリーム、食べたことある?」

「ないです。ありがとうございます!」


安田さんから「はい」と手渡されたシュークリームはズシッと重かった。クリームがたっぷり入っているのが感じ取れる。

「いただきます」とかじるとモチモチとした柔らかい生地の中から、カスタードクリームがとろっと出てきて口の中で生地と混ざりあった。
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