この愛、スイーツ以上
副社長と私のやり取りを高畠社長や東郷社長は鋭い瞳で見ていた。


「涼太、どういうことだ? 吉川さんが言う嘘とか断ったとかいうのはどういう意味?」


東郷社長に厳しく訊ねられても副社長は動じることなく淡々と答える。


「断られたのは本当だけど、俺が結婚したいと思うのは由梨だけなんだ」

「一方的な気持ちを押し付けるのはよくないな。吉川さんは涼太が好きではないんだよね?」

「えっ、あの……」


好きとは言えないけど、嫌いではない。答えにならない答えだから、言えない。

どうしよう。


「由梨」

「はい!」


副社長に呼ばれて、つい元気よく返事をしてしまった。


「それと同じ返事をしてくれない? 結婚してください」


ええっ! その指輪はどこから出てきたの?

手品かなにかなのかいつの間にか副社長の手の中に小箱があって、そこにダイヤが付いた指輪があった。

高畠社長夫人はまた「まあ!」と言い、真由美さんは「きゃあ!」と言っていた。

こんな人前でプロポーズされるとは想定外だ。

なんて答えるべき?

どうしたらいいの?

短い時間の中で、悩みに悩んだ私は「はい」と「いいえ」以外の返事をする。


「考える時間をください」
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