この愛、スイーツ以上
副社長はガバッと顔を上げて、私の前までやって来た。いきなり動いて頭は大丈夫なのかな。

しかし、そんな心配を他所に突然私の頬を両手で挟んだ。それから顔を近付ける。

なに?

なにされるの?


「由梨、かわいい」

「えっ……」


突然名前で呼ばれて私は声を失った。だって、ものすごい優しい目をしているというか愛しいものを見る目をしているんだもの。

だけど、この状態からどうしたらいいのか戸惑う。困って安田さんに助けを求めるように見ると、彼は口元を押さえて声を出さないように笑っていた。

笑っていないでなんとかして。絶対変な顔になっているんだから。

なんとかしてくれなさそうだから、前に出てしまっている唇を辛うじて動かした。ちゃんと言葉になっているかは分からないが。


「あ、あの、私、副社長にお話したいことがあってきたんですけど」

「俺に話?」


押さえられているけど、顔を縦に振る。それで自分がしていたことに気付いたのか、副社長は頬から手を離した。


「あ、ごめん」

「いえ」
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