この愛、スイーツ以上
密着している状態で告げられる言葉はオフィスにふさわしくなく、どう反応するのが正解か分からないから身動き出来ずにいるしかなかった。

大切なものを抱くような優しい手と温もりに私の心は落ち着くどころか大暴れしている。

大きく動いている心臓の音は副社長に伝わったようだ。


「由梨はドキドキしてる? 心臓の音が大きいね」

「だって、突然こんなことされたら……」

「嫌だ?」

「嫌とかそういうのではなくて、恥ずかしというか……」


自分の動揺さえもどう伝えていいか分からなくなる。早く解放して欲しいのに、それを伝えられない。

私は割りと自分の思いをハッキリと言う方だけど、副社長の行動や言動は予想外のことばかりで、言うべきことが出てこない。

困ったな。

とにかく今はこの状態をどうにかしてもらわないと……思っていると、助け船が現れた。


「副社長……うわっ、何しているんですか?」


常に冷静な安田さんもさすがにこの状態を見て、驚く。


「ん? ああ、心を落ち着かせていた。なに?」
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