俺の花嫁~セレブ社長と愛され結婚!?~
「んんっ――」

抵抗しようとした手のひらに指を絡められて、戦意が失われた。
潤んだ瞳は少しだけ冷徹社長の面影を引きずっていて、冷たい。
けれど彼の唇の動きだけは情熱的で、熱を帯びていた。

「だ、誰か来たら、どうするの……」

「社長室にノックなしで入ってくるやつなんかいねぇよ」

「でも、こんなところで……」

「これ以上ないくらい、燃えるシチュエーションだろ?」

不謹慎なことを言う大河に反論しようとしたところで、大河の人差し指が私の唇を押さえた。

「ストップ。俺に意見するな。社長命令」

「なっ……!?」

こんなことに社長命令を使うなんて、あきれてしまった。
けれど、吐き出そうとした文句は彼の口づけによってあっさりと飲み込まれる。

キスをすれば思い通りになるとでも思っているのだろうか。少しだけ腹が立つ。
けれど、実際その通りで、大河の求めを断ることなんてできない。
なぜかと問われれば、この彼に制圧されている時間がとんでもなく幸せで――。

「黙って受け入れろよ。昨日できなかった分、たっぷり愛してやるから」

威圧的な愛情表現にうっとりとしてしまうなんて、重症だ。
けれど目を瞑れば、その感触がよりはっきりとして、酔わされる。
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