俺の花嫁~セレブ社長と愛され結婚!?~
「本来の採用基準は、秘書としての実務経験にプラスして秘書検定やTOEICなどの資格を持っていることだ。他人が莉依の経歴書を見れば、俺がひいき目で入社させたことはすぐにわかる」

さっと背筋が冷たくなる。資格なんてろくなものを持っていないし、英語だって話せない。
だからこそ、今まで就職試験に落ちてきたのだともいえる。私の履歴書は平凡そのもので、キャリアアップできるほど輝かしい業務経歴を持つわけでもない。

本来、大河の勤めるような一流企業で雇ってもらえるほど、引く手あまたな人材ではないんだ。

「とはいえ、今から秘書の実務経験なんて詰めないし、資格を取っている時間もない。だからせめて、お前なりの強みを磨いてほしいんだ。うちの会社や業界の事情に詳しければ、その辺にいる秘書よりもぐっと人材としての価値が跳ね上がる。そうすれば、誰もお前をコネ入社だなんて罵るやつはいなくなる」

大河なりに、私がどうすれば居心地よく働けるか考えてくれたのかもしれない。
彼の真摯な眼差しを見て、この無理難題が然るべき手段なのだと悟った。
浮ついていた自分の心が、引き締まっていく。

「うん……わかった。出来る限り努力する」

不安気な表情を拭いきれない私を見て、大河も申し訳なさそうな顔になる。

「……きついこと言って、ごめんな」

私の頭に、そっと大河の手が添えられた。

どうしてそっちが謝るんだ。悪いのは全部私なのに。
経験もこれといったアピールポイントもない私を雇ってほしいだなんて、無茶を言ってるのは私の方なんだから。
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