俺の花嫁~セレブ社長と愛され結婚!?~
「こっちこそ、ごめん。秘書なんてやったこともないのに働かせてもらおうなんて……」

結局私は大河に甘えているんだ。
自分はなんて情けないんだろう。悔しくて目に涙が浮かんできてしまったから、慌てて背中を向けた。
けれどそんな私を見て、大河はいっそう困り果てる。

「そんな顔すんなよ……」

情けない声を上げた大河は、なにを考えたのか、突然私の体を背中からぎゅっと抱きしめてきた。

「た、大河!? ちょっと、どうしたの……!?」

「だって、なんか俺が泣かせたみたいだから」

「な、泣いてないから離してよ」

思わずじたばたと暴れると、大河はそんな私を押さえつつ、肩に顎をぽすんとのせた。

「お前、いままで俺の前で泣いたりすることなんかなかっただろ」

「泣くつもりなんてなかったんだけど、人生最大の危機だったから、つい……」

「泣かれると、正直どう接してやればいいのかわからない」

「もう二度と泣かないようにするから、忘れて」

「いや、泣くなっつってるわけじゃなくて」

大河は私の顔を覗き込むと、少し照れくさそうに顔を赤くした。

「……今まで考えたこともなかったけど……俺が守ってやらなきゃって……」

瞳を伏せて、わずかに躊躇ったあと。
大河が、私の左頬にそっと唇で触れた。

それは初めて大河からもらった、びっくりするほど優しいキス。

私は突然の出来事に完全に身体が固まってしまって、逃げることも応えることもなにもできず、ただ愕然と大河を見た。
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