俺の花嫁~セレブ社長と愛され結婚!?~
「大……河……?」

「うるさい。どうすればいいかわかんないって、言ってるだろ」

「う、うん……」

しばらくの間、沈黙がふたりを包んで、私たちはお互いを推し量るみたいに体を寄り添わせていた。

頬にくれたキスは、大河が悩んだ末の慰めなのだろうか。それともなにかもっと深い意味が……あるのだろうか。
鼓動だけがドクドクと早くなっていく。時間の流れはバカみたいに遅くて、強張った体から彼の感触がじわりじわりと侵食してくる。

普通だったら、このままロマンスっぽいことを考えてしまうところだけれど――。

期待……なんてしちゃ、だめだよね……?

困惑して動けずにいると、やがて大河は私の体を離し立ち上がった。

「とにかく、今日はもう疲れただろ? 早く休め。ひとつ開いてるベッドがあるから」

「……うん」

この流れでベッドと聞いてドキドキしてしまう私はおかしいだろうか。

気まずく目を伏せる私に気づいた大河が、まじまじとこちらを見て首を傾げる。

「どうした?」

「ううん、なんでもない……」

大河は私の手を引いて立たせると、リビングを出て廊下へ向かう。
けれど、廊下を出たあたりで――。

「……眠れないなら、俺のベッドにくるか?」

「っえ――!?」

「ばーか、冗談だよ」

動揺しっぱなし私の心は、あっさりと弄ばれてしまった。
バカバカ、意識しすぎだ。なにかあるわけない。さっきの頬のキスが私の心に致命傷を負わせていて、気が動転している。
冷静になれ、冷静に。
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