俺の花嫁~セレブ社長と愛され結婚!?~
次に大河が部屋から出てきたのは、もうすでに日が落ちてしまった午後七時。

「悪い、すっかり寝ちまって」

うしろ髪に軽い寝癖を跳ねさせながら、大河がリビングへと戻ってきた。

私はキッチンに立って味噌汁の入ったお鍋をかき混ぜながら、肩越しに振り返る。
ふわわわ、と大きく伸びながら欠伸する大河の表情がいつも通りに戻っていることを確認して、ほっとした。

「夕ご飯、食べる? 作ったんだけど」

「えっ!? お前が?」

「なに、その以外そうな顔。夕飯くらい作れるよ」

有無を言わさず丼ぶりの上にご飯を盛り、その上から鶏肉と玉葱の卵とじをかける。最後に三つ葉をのせて親子丼の出来上がり。
大河の買ってきた食材から考えられるメニューはこれしかなかった。

「凄い。俺が作ろうと思ってたものと同じ。以心伝心だな」

「鶏肉と卵と玉葱があったら、だいたいみんなこれ作ると思うよ」

「……あいつは違った」

「え?」

「いや、ごめん。こっちの話。……本当は俺が作ってやりたかったんだけど、手間かけてごめんな」

ついさっきのひと言を完全になかったことにして、大河が話の続きを始めてしまったから、これ以上なにも詮索できなかったけれど――。

もしかして、恭子さんは違うメニューを作ったのかな……?

なんだかもやもやとした気持ちのまま、親子丼とお味噌汁をお盆にのせてダイニングテーブルへと運んだ。
< 56 / 173 >

この作品をシェア

pagetop