俺の花嫁~セレブ社長と愛され結婚!?~
「これ、いいんじゃねぇの?」

そう言って鏡の前に立つ私に合わせてくれたのは、白いツイード生地のスーツだった。
都会のキャリアウーマンが着ていそうなそれは、上品で清楚、かつ、明るくて華がある。
ファッション雑誌やドラマに出てくるモデルや女優ならともかく、私が着てもその洗練された空気が纏えるとは思えなかった。

「大河、本当にこれを私が着こなせると思ってる?」

「お前は自分をわかってないんだ。勝手に地味な服しか似合わないと思ってるだろ」

それから、大河は四枚のスーツを差し出してきた。
色は様々。グレー、ネイビー、レモンイエロー、ペールピンク――うしろの二着は普段私が絶対に着ないであろう爽やか過ぎる色合いだった。
特に『ペールピンク』の一着は、フェミニンで素敵だが、スカートがかなり短い。

「よし、一週間分」

「ちょっと待って、私こんなの、着れな――」

「とにかく着てみろって。俺が保証してやるから」

大河は強引に白いツイード生地の上下セットを持たせて私を試着室に押し込もうとする。けれど――

「でも、こんなにたくさん、今の私の貯金じゃ無理だし」

値札をぺらっとめくって、絶句した。想像していたよりも桁がひとつ多かった。
これ全部買ったら、給料二ヵ月分超えちゃうんじゃないかな……。
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