俺の花嫁~セレブ社長と愛され結婚!?~
固まってしまった私から、大河が値札をふんだくる。

「安心しろ。全部買ってやる」

「こんな額、出してもらうなんて――」

「いいんだよ。その分お前が働いて俺に貢献してくれんだろ?」

そう言って大河は私の背中を押して試着室の扉を閉めた。
仕方なく私はジーンズのボトムを脱ぎ、白いスカートに脚を通す。

普段はパンツばかり履いているから――特に就職していた頃は、部長のお触りから逃れるためにスカートなんてとてもじゃないけれど履けなかったし――膝上のタイトスカートがスカスカとして落ち着かない。

その上、同色のジャケットを羽織れば一気に空気がピリリとする。

試着室の大きな鏡に映った自分の姿は、まるで別人だった。
知的で清楚な黒髪、メイクで華やかになった顔立ち。清廉でエレガントなスーツ姿。

バスト、ウエスト、ヒップが描き出すしなやかな曲線は、このブランドのこのデザインでしか表せないフォルムだろう。

大人の女性に変身したみたいだ。仕事のできるイイ女、という感じがする。
けれど、この凛とした佇まい、最近どこかで見たような……。

ハッとして思い出したのは、大河の前の秘書――元カノの恭子さん。
彼女ならきっとこういうスーツがよく似合う。
ううん、それどころか――

大河に染めてもらった真っ黒な髪に触れながら、胸の内に広がる不安感に鳥肌が立った。

この髪も、大人っぽいメイクも、スーツから放たれる雰囲気も。
全部、恭子さんの焼き増しじゃない……。

もしかして大河は、恭子さんの面影を重ねているの……?
私を使って、恭子さんを作り出そうとしている……?
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