俺の花嫁~セレブ社長と愛され結婚!?~
「天宮莉依です。よろしくお願い致します」

「秘書課にご案内します。詳しい説明は中で――」

愛想のないピリッとした空気を纏いながら、その男――篠原さんは早足でエレベータへと向かった。
一度たりともこちらを振り返ることはせず、私への気遣いなど皆無だ。
もしかして、歓迎されていないのだろうかと不安になってしまった。

秘書課のオフィスは三十五階にあった。社長室や役員室のある一階下だ。
なにかあったときにすぐ駆けつけられるよう、一番近い場所にオフィスを構えているそうだ。

そのフロアはもぬけの殻だった。日中は誰もが担当の役員につきっきりであるため、出払っているそうだ。
この場所の主な役割は荷物置き場で、その他には、早朝や定時後の事務作業や、稀に担当役員が予定外休暇を取得したときに暇をつぶす場所として使われるらしい。

「出社をしたら、自席で準備を整えたのち、社長室へ来てください。社長が出社する前にこなしていただかなければならない仕事もありますので、定時三十分以上前が理想です。しばらくは教育を兼ねて私と行動を共にしていただきます」

一方的な説明が続く。
私はメモを取りながら、「はい」と「わかりました」をひたすら繰り返していた。

もちろん、熱意がなくて適当に流しているわけではない。
この冷ややかで事務的すぎる篠原さんに、世間話やクッション言葉を使う隙が見当たらないのだ。

これから先、この人とうまくやっていけるか自信なくなってきた……

慣れればもう少しフレンドリーになってくれるのだろうか。それを期待しつつ、私はひたすら篠原さんの後を追いかける。
< 81 / 173 >

この作品をシェア

pagetop