俺の花嫁~セレブ社長と愛され結婚!?~
戸惑いぼんやりとしているうちに、篠原さんが頭を下げた。
計ったように美しい四十五度。慌てて私も頭を下げる。

そんな私たちには脇目もふらず、大河は部屋のど真ん中を通過して一直線に自分の執務卓へ着く。

「第一総和物産と提携の話が持ち上がっている」

その声は低く冷ややかで、聞き覚えもなく、一瞬もうひとり知らない誰かが部屋に入ってきたのかと思った。
慌てて顔を上げて確認するが、その声の持ち主は間違いなく大河である。

「午後までに調査資料を用意しろ。それから、会長は一ツ菱不動産の幹部だった男を役員に迎えるつもりらしい。至急身辺を洗い出してくれ」

ドカっとソファに腰を降ろし脚と腕を組んだ大河からは、今まで感じたこともない威厳が満ちあふれていた。
その瞳は鋭く、いつもの大河とはまるで違う。見ているだけで恐怖が湧き上がってくるような破壊的な眼だ。
弱いものは易々と踏みつけるような、絶対的圧力がある。

「承知しました」それだけ答える篠原さんを流し見て、大河――いや、私の知らない『社長』は恭子さんの方へ視線を向ける。

「田上、このあとの取締役会に同席しろ」

「申し訳ありません。十一時には会長のもとへ戻らなくてはなりません」

「なら篠原だ」

「お言葉ですが、私が会議に出てしまえば、調査資料作成が間に合いません。会議は彼女に任せてみてはどうです? 経歴からいって、議事録くらいは取れるでしょう」
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