優等生、中川君。
「……な、中川君」
「……ん?…違うの」
そう言って中川君は、少し笑いながら首をかしげる。
中川君は多分、2重人格だ。
「中川君って2重人格…」
「そうかな」
「そうだよ」
2人の距離は、15cm。
「自分では、多重人格だと思ってた。」
「じゃあ、多重人格…」
「ふはっ」
中川君が、声を出して笑ったのと同時に、距離は離れた。
「……しないよ、……キス。」
中川君はふいに眼鏡を外して、ポケットから眼鏡拭きを出して、レンズを拭き始めた。
キス、しないんだ。
元々そんなキャラじゃないしね。
落ち込んでいる自分は、一体、なんなんだろうか。