chocolate mint
「裕介、お疲れ様ー。迎えに来てあげたわよ」
仕事終わりの僕を待ち構えるように『Felitita』に現れた紫ちゃんを見た瞬間に、思わず回れ右をして店に戻りたくなってしまった。
妙にニコニコして、ご機嫌な紫ちゃん。
こんな時はろくな事にならないってのを今までの経験から身に染みて分かっている僕は、ため息と共に言葉を吐き出した。
「……何処に行けばいいの?」
回りくどい話は面倒なので、さっさと本題へどうぞと促してみる。
「とりあえずレインボータウンまで車出して」と、駅前から車で20分ほどの距離にあるショッピングモールまで車を出すように命令された。
……あー、荷物持ちか。
一瞬で憂鬱な気持ちになったけど、明日の貴重な休みを荷物持ちに使われるよりは、よっぽどマシかもしれない。
僕は無言で職員用の駐車場まで歩き、買ったばかりのハイブリッドカーの助手席のドアを開けた。
基本的に紫ちゃんの命令に『ノー』と言うことは許されない。
だけど、だけどだ。何が悲しくて……
一生懸命に働いて買った車に乗せるのが、この我が儘な姉だけなのか。
たまの休みだって死んだように眠るだけで、これといった予定も無い。
せめて、可愛い彼女でもいればなぁ。