chocolate mint

そこまで考えて、何故か頭に浮かんだのは崎山先輩の笑顔だった。


先輩が教育大を出て、夢だった小学校の先生になったのは紫ちゃんから聞いて知っていた。


……元気にしてるかな。


そう思った瞬間に、「裕介。今日香織がさ、家に泊まりに来るから。だからレインボータウンのスーパーの方に車停めてね」と紫ちゃんが言った。


たった今頭の中で思い出していた人の名前を聞いて、心臓がドキリと音を立てた。


「……っ、何で?」


「今日家、誰もいないでしょ?」


確かに、今日両親は市外の親戚の法事へと出掛けて留守にしていて、帰って来るのは明日の夜だった。


だけど、一つだけ言わせてもらいたい。


『誰も』いないって……僕がいるんですけど。


「あぁ、裕介の事を忘れてた訳じゃないのよ。むしろ居てもらわなくちゃ困るし」


そのまま紫ちゃんは助手席から上目遣いにこっちを見て、「裕介、何かつまみとか料理とか作ってよ。香織にはお酒だけ持って来てって言っちゃったの。裕介だけが頼りなのよ。ねっ、一生のお願い!」と手を擦り合わせながらお願いをしてきた。


……もしこれが本当に一生のお願いなら、紫ちゃんは10回以上生まれ変わっていなければ、計算が合わない。
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