chocolate mint
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「あっ、葉山さんお疲れ様です。待ち合わせの人、外に来てましたよ」
瀬尾の言葉で、もうとっくに紫ちゃんとの約束の時間が過ぎていた事に気がついた。
「急に出てもらって悪いね、瀬尾。ありがとう」
夏休みに入った最初の週末だからか、『Felitita』の店内は予想以上に混み合っていた。
最悪なことに、こんな時に限って和希さんと有紗さんは揃って出張だし、風邪を引いて休んだスタッフもいて、今日はホールもキッチンも人手が足りず、両方を行き来していた僕は昼休みも取れないほど忙しく働いていた。
夕方からの時間はマネージャーの橘さんもいるし、瀬尾も出て来てくれたし、僕がいなくても大丈夫なはずだけど……
外に目をやると、雨がちらついていた。
こういう天気に待たされると、紫ちゃんは死ぬほど不機嫌になる。
雨が嫌いなくせに、よっぽど降らないと面倒くさいと言って傘も差さない。意味が分からない。
そんな事を考えているうちに、雨足はどんどん強くなっていった。
……参ったな。まだ、夕方への引き継ぎも終わってないのに。
焦っていた僕は、何も考えずに「ごめん、瀬尾。待ち合わせてるの僕の姉だから。車で待っててって言っといてもらえる?」と瀬尾に車のキーを渡してしまっていた。