おばさんガール
看護師にお願いし、担当医を呼んでもらった。

「あの…私、身体はもう大丈夫そうです。
近い内に、外出させていただけないでしょうか?」


三津代は医者に言った。


医者は少し困った表情を浮かべてこう言った。

「確かに…岸さんの体を調べたところ健康上は問題ありませんでした。足の怪我も思ったよりも悪くありません。

…ですが、記憶が遮断されている今、急に前の暮らしに戻るとゆうのは問題があります。

もしかしたら記憶を取り戻すかもしれないですし…。
例えばあなたに近い親族の方に会われてみるなど、徐々に頭を慣らしていった方がいいと思います。」

そう言った医師に、三津代は答えた。


「…でも、覚えてない頃の私は、何だかあまりいい生き方をしていなかったようなのです。


もし仮に記憶が戻ったとしても…

私は幸福に生きていないかもしれない。

それに、私の人生を私は知らないんです。万一記憶が戻ったりしたら…15歳の私はいなくなるのではないですか?」

医師は難しい顔をした。

「それがどうなるのかは、申し訳ありませんが私にも分かりません。

しかし、今の岸さんには受け止めきれない事実があるかも知れない。

…もう少し、経過を見させていただけないでしょうか?」

医者は頑なに三津代の外出を制止した。

三津代は肩を落とした。

「そうですか…。少し、考えてみます。」

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