私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
石堂さんと私しかいない夜のスフラ。

BGMは音楽ではなく、コポコポと湯の湧く音とガリガリと豆を挽く音。石堂さんは思いついたコーヒーレシピをいくつか試作し始め、時折ひとりごとをつぶやきながらメモをしたりしている。今夜は私のレッスンどころではないようだ。

ロートの中をかき混ぜる真剣な眼差しはひと際凛々しくて、ドキドキしてしまう。声をかけようとしたら「話しかけるな、気が散る」と怒られてしまった。

私はスツールに腰掛け、カウンター越しに石堂さんの動きを目で追う。

石堂さんの動作には無駄がない。何もかもが正確で、さすがだと感心させられる。興味、憧れ、羨望、といった感情が入り混じって、もっと石堂さんを見ていたくなる。そして石堂慧という人を、もっともっと知りたくなる。

こういう興味から恋愛感情に発展しちゃったり……する――?

いやいやいや、だって石堂さんだもの、ありえない――。

面倒くさい女だとか、嫌な女だとか、散々言われようだけれど、どうしてこんなに石堂さんのことを知りたいのか自分でも不思議だ。

「よし! できたぞ、おい、なにぼさっとしてんだ」

「は、はい!」

石堂さんへの思いを馳せかけたところで声がして、私はハッと我にかえる。
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