私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
「ベースは深焙煎の少し苦味とコクのあるものを考えてみたんだ」

なるほど……。と、先ほどまで口の中が甘さでいっぱいだったのが、コーヒーの風味によってさっぱりと中和される。

「うまく言えないんですけど、アイスコーヒーを飲むと口の中がさっぱりします。ホットだと濃厚さが増しますね。ホットだったら、石堂さんのラテアートがあれば……」

「はぁ、お前な……」

石堂さんは腰に片手を置いてため息づいた。

「ラテアートって言ったって簡単じゃないんだぞ? 失敗すればやり直しもきかないし、俺のほかにラテアートができるやつは、この間辞めたからな。それに、時間がかかってしょうがない。混雑時にはできるかわからないだろ」

確かに修正するためにミルクを注ぎ足すのも味が微妙に変わってしまうし、形の崩れたものは出せない。特に朝のモーニングタイムの混雑時に、石堂さんがひとりでラテアートをやるわけにもいかない。

だったら……。

「じ、じゃあ、私にも教えてください! ラテアート」

「はぁ?」

石堂さんは、なに馬鹿なこと言ってんだ。と勢いづいた私を呆れた目で見た。

「まだクリスマスまで日にちもあります。家でも練習します。だからお願いします!」

「ったく、なんなんだよ、そのハングリー精神」

そういいながら、石堂さんは使っていた器具を片付け始める。ろくにコーヒーを淹れられないくせに、さすがにあつかましいお願いかもしれないけれど、もっと石堂さんに色んなことを教えてもらいたい。
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