私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
「なんだ、まだいたのか」
出先から帰ってきた石堂さんが、勝手口から店に入ってきた。雅人さんも私も言葉が見つからずに互いに黙っていると、その不穏な雰囲気になにも知らない石堂さんは、怪訝な表情でコートを脱いだ。
「石堂さん、本社に戻るって……本当なんですか?」
「え……?」
単刀直入に私がそう尋ねると、案の定、石堂さんは私の言葉に瞠目した。そんな顔をされると、切なさで胸が押しつぶされそうになってしまう。
もっと、石堂さんの下でバリスタとして教えてもらいたいことがたくさんあるのに――!
私をバリスタの高みへ押し上げてくれるって言ったのに――!
「花岡さん、もしかして水谷に会ったのかな? 先日、花岡さんが帰った後に彼が店に来てね、バイトの子に花岡さんのこと聞いてたから……」
「……そうか」
雅人さんが言うと、石堂さんは無表情のまま言った。
「……すみません、もう帰ります」
「あ、おい! 待て!」
私は伸ばされた石堂さんの手をすり抜ける。これ以上ここにいたら、また心にもないようなことを言ってしまうかもしれない。居た堪れなくなって、私はバッグを勢いよく引き寄せて勝手口を飛び出した。
出先から帰ってきた石堂さんが、勝手口から店に入ってきた。雅人さんも私も言葉が見つからずに互いに黙っていると、その不穏な雰囲気になにも知らない石堂さんは、怪訝な表情でコートを脱いだ。
「石堂さん、本社に戻るって……本当なんですか?」
「え……?」
単刀直入に私がそう尋ねると、案の定、石堂さんは私の言葉に瞠目した。そんな顔をされると、切なさで胸が押しつぶされそうになってしまう。
もっと、石堂さんの下でバリスタとして教えてもらいたいことがたくさんあるのに――!
私をバリスタの高みへ押し上げてくれるって言ったのに――!
「花岡さん、もしかして水谷に会ったのかな? 先日、花岡さんが帰った後に彼が店に来てね、バイトの子に花岡さんのこと聞いてたから……」
「……そうか」
雅人さんが言うと、石堂さんは無表情のまま言った。
「……すみません、もう帰ります」
「あ、おい! 待て!」
私は伸ばされた石堂さんの手をすり抜ける。これ以上ここにいたら、また心にもないようなことを言ってしまうかもしれない。居た堪れなくなって、私はバッグを勢いよく引き寄せて勝手口を飛び出した。