私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
まだ、顔合わせをしていないと思っていたけれど、すでに姉は石堂さんと会っていた。しかも、自分から会いに行ったようで、いったいなんの目的で石堂さんに会いに行ったのだろうかと疑念が沸く。

「智美さんとの婚約の話しは父から受けました。一ノ宮コーポレーションは、昔の取引先だったから……と。でも、調べたところ、今はずいぶん荒いお仕事をなさっているようですね……例えば、違法すれすれの無理な地上げだとか」

「なッ――」

石堂さんの言葉に、一ノ宮さんがピクリと頬を引きつらせ、顔色が一変する。

「一ノ宮コーポレーションは、うちの会社とも昔は友好的な取引先だったそうですが……それは父がまだ社長だった頃の話です。兄が社長に就任し、父が退いてから……お宅の会社はずいぶんやり口が変わりましたね、だから兄から取引契約を切られたのでは?」

先程まで温厚そうだった一ノ宮さんが石堂さんを睨み、低く唸る。
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