私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
しかし、その醜聞はあくまでも巷での噂で、ニュースで取り上げられたりして公になっているわけではなかった。おそらく、なんらかの圧力をかけているに違いない。だから、何も知らない企業は、一ノ宮コーポレーションを大企業とみなしている。

兄が言っていたように、一ノ宮コーポレーションは二年前くらいに兄が契約をあっさり解約してしまったところだということは知っていた。懇意にしていた会社と契約を解除するのは珍しいことじゃない。だから、俺も、その当時、うちに不利な契約なのだろう、素行の悪い会社と繋がりを持ちたくないのだろう、という憶測に、特に疑問を持たなかったし、兄の一存にも意義はなかった。

問題は、なぜ、契約の切られた会社がいまさら、お見合いの話を持ってきたのか?ということだ。

大方、あわよくば再契約しようと、政略結婚を持ちかけたのだろうと、だいたいの見当はついていた。しかし、一ノ宮コーポレーションも馬鹿な会社じゃないようで、理不尽な仕事のやり口をしているという決定的な証拠を綺麗にもみ消している。クチコミだけの噂では信ぴょう性もなく、実際、一ノ宮本人に確認したところでごまかされてしまうだろう。

こんな噂のある会社の令嬢とお見合いさせようなんて、親父も落ちたな――。

親父がまだ現役で取締役だった頃は、トップ企業の社長として、他社から揚げ足を取られないように常に警戒を張り巡らせていたというのに、こんな情報もキャッチできないなんて、年食った証拠だ。
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