私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
思わずスマホが手から滑り落ちそうになった。思考が停止して言葉に詰まっていると、何度も俺を電話の向こうから呼ぶ塚本の声に我に返った。

『石堂さん? 大丈夫ですか? あの、もしかして、今忙しかったですか? また、あとでかけ直しま――』

「気が乗らないなら、俺と代わってくれ」

『……へ?』

俺の突然の申し出に、塚本の声が裏返る。それもそうだ、自分が行こうとしているお見合いを代わってくれだなんて、とんでもないにも程がある。けれど、塚本は、本当に気が乗らなかったようで、俺の申し出にも満更でもない返事が返ってきた。

『本当にいいんですか? ぶっちゃけると、うちもまだ中小企業でしょ? 妙な噂がある一ノ宮と関わりを持ったことで何かあったら、巻き返せるかどうか不安だったんです。うちの従業員にも迷惑かけたくないし……けど、せっかく申し入れてくれたからと無下にできなくて……』

大企業とのお見合いとなれば飛びつきたいはずだ。力のある会社と繋がりたいのは誰しも思うこと。けれど、塚本が社長として自社の利益より、身内のことを考えるまっとうな人間でよかった。
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