私、それでもあなたが好きなんです!~悩みの種は好きな人~
どうしてこんなところに……。と思いながら手に取ると、それはもういつ撮ったか思い出せないくらい昔の家族写真だった。

栗色の長い髪、優しそうに微笑むまだ二十代くらいの母の腕の中には自分と瓜二つの双子の姉。その横には写真が照れくさいのか、にこりともしない厳格そうな風貌の若かりし父に、無邪気に抱きついている私。

一見、なんの変哲もないごく普通の幸せな家族に見える。

引っ越す前にこの写真を見つけていたらおそらく捨てていただろう。希望に胸が躍っていた私に、それはじわじわと暗い影を落としていった。

面接の時、雅人さんには家族はいないと言った。父はすでに鬼籍に入っているが、本当は母と姉がいる。けれど今となってはいないと言ったほうがいいかもしれない。というのも、母も姉も今はどこで何をしているかまったく知らないからだ。
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