ハニートラップにご用心
「土田がゲイかどうかだって」
「そこまで言ってませんよね!?」
にやにやとしながら私の言葉を歪曲して土田さんに再度伝えた柊さんにすかさずツッコミを入れると、柊さんは堪えきれないと言うように口に手を当てて吹き出した。
ざっくり言ってしまえば同じ意味なんだけど、せっかくオブラートに包んだのだから勘弁して欲しい。本人に聞くにはいささかデリケートな問題だ、土田さんを怒らせてしまったらどうしよう。私が不安でそわそわと土田さんの反応を待っていると、柊さんは土田さんの肩に肘を置いて顔を近付けた。
「土田ー、俺のことも守備範囲だったりすんのー?」
「おえっ……仮に恋愛対象が男だとしてもアンタのことは好きにならないわ」
「今何で吐きかけた?傷付くんだけど」
土田さんは心底嫌そうに柊さんを睨み付けて肩に置かれた肘を払い除けた。ハッキリと拒絶をされた柊さんは傷付く、と言う割には楽しそうに両手を上げて降参のポーズをしている。
ていうか、"仮に恋愛対象が男だとしても"って、つまり。
「……土田さんって、女好き……?」
「どうして千春ちゃんはいつもゼロか百なのかしら」
震える声で私がそう言って顔を上げると、土田さんは呆れ顔で目を細めながら私を見ていた。ひく、と口角を引きつらせると頬の肉をつまみ上げられた。
「言ってなかったかしら?アタシ、口調はオネエだけどちゃーんと心は男よ」
「……え?」
私が間抜けな声を出して数回瞬きする。土田さんはんべ、と舌を出して私の頬から手を離した。彼が発した言葉の意味を理解できずに、ただ呆然とヒリヒリと痛む頬を押さえる。
恐る恐る顔を上げて土田さんを見上げると、彼はにっこりと惚れ惚れするような甘い微笑みを向けてきた。
「え、むしろ桜野お前、あれだけ一緒にいて知らなかったの?」
柊さんの呆れたような驚いたような声が背後から聞こえた。