ハニートラップにご用心
「どした?俺に惚れた?」
「いえ、それはないです」
「即答じゃん」
にやにやと軽口を叩いてくる柊さんに真顔で首を横に振ると、豪快に笑い飛ばされた。
こうして柊さんにからかわれるのはもう慣れた。最初こそ私の人見知りと柔軟性の乏しい性格からやたらと慌てたり赤面したりしてしまったけど、そういうコミュニケーションの取り方をする人なんだと分かってからは軽く受け流すようにしている。
「あの……柊さんって、土田さんと仲良いですよね」
「うん。同期だしそれなりには」
脈絡のない質問に少しだけ驚いた表情を見せる柊さんを見上げて、私は深く息を吸ってから言葉を発した。
「土田さんって男の人が好きなわけじゃないんですか?」
返事の代わりに降りてきたのは沈黙。
柊さんは予想もしていなかった質問だったのか、驚いたと言うよりも何を聞かれたのかわからないといった呆然とした表情をしていた。
「……桜野」
「は、はい」
私の質問には答えず、急に神妙な面持ちで人差し指を突き出して私の後ろ辺りを指さした。つられるようにして振り向くと、ちょうどこの場で話題になっていた本人が苦い顔をして私のすぐ後ろに立っていたのだった。
「アタシが……何ですって?」
目と目が合った瞬間にっこり笑った土田さん。その笑顔にどことなく威圧感があって、思わずヒッと悲鳴を上げてしまった。