悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
レオン様は片膝を立て、その膝の上に頬杖をつき、どこか遠くを見ているような目をして話してくれた。

それはこんな話だったーー。


八歳の頃の彼は勉強と馬術、剣術の稽古に一日の多くの時間を割いていた。

ある夏の暑い昼間のこと。

城内の兵舎に隣接する訓練場にて、レオン様はベイルという名の兵士から剣の稽古をつけてもらっていた。

ベイルは十年ほど前に入隊した青年で、年齢は三十一歳。

実直で優秀な彼は小隊を率いる軍曹を務め、他の兵や王族からも信頼が厚く、レオン様も剣の師として彼を慕っていたそうだ。

それなのに……。


一時間の剣術の稽古が終わった直後に、それは起きた。

剣を鞘に納め、背を向けたレオン様に、突然ベイルが奇声をあげて斬りつけたという。


そこまで聞いて、私は憤った。

真面目に仕えるふりをして周囲を欺き、十年間も暗殺の機会を狙っていたのかと思ったのだ。

「なんてひどい男なの……」と怒りに震える声で呟けば、レオン様に首を横に振られる。

その青い瞳に怒りは微塵も感じられず、「ベイルは悪くない」と切なげに顔をしかめていた。


暗殺未遂犯が悪くないとは、どういうことなのか……。

怪訝な目を向けてしまうと、彼は頬杖を外してその手を差し出してくる。

不思議に思いながら私の左手を重ねると、軽く握られた。

たちまち鼓動が速まるのを感じながら、私は続きの話を冷静に聞こうと努力する。

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