悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
王女の縁談を壊すつもりは毛頭ないので、編み物を贈るのはやめたほうがいいと、遠回しに教えてあげた。


「まぁ、なぜかしら。子供が編んだようなクロスが、途中から目が細かく均一で美しい仕上がりに変わっておりますわ。編みながら上達されたのですね。きっと王子様もお喜びになられることでしょう」

「な、なんですって!?」


怒りが頂点に達した様子の王女は、「落ち着いてください」と繰り返す侍女の顔にテーブルクロスを押しつけると、足を踏み鳴らして私との距離を半歩詰めた。

私たちの顔の距離は、わずかリンゴふたつ分ほどで、唾が飛んできそう。

「あなたなんて、この城から追い出してやるんだから!」と息巻く王女に、私は努めて冷静に切り返す。


「追い出される理由がわかりません。なにもしておりませんもの。どうしてわたくしが、王女殿下の編み物に悪戯をしなければならないのでしょう」

「しらを切ろうとしたって、そうはいかないわ!」


鼻の付け根に皺を寄せて憤る王女は、私を追い詰めようとして、余計なことまで言ってしまう。


「意地悪だと編み込まれたこの文字が、あなたが犯人である証拠だわ。これは仕返しだって分かっているのよ。あなたの人形の服を切り刻んだことへのね!」


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