悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
髪飾りに夢中で気づかなかったが、両開きのドアの片側が開いていて、私の目の前には誰かの足があった。

一流の職人があつらえたような茶色のブーツに仕立てのよい黒いズボン。藍色のマントを羽織ったその人の顔を見上げ、私は驚いて目を瞬かせた。


「レオン様……」


なぜ彼がここにいるのか。
今日は婦人のみの集まりなのに。

優しい笑みを浮かべて、彼は右手を差し伸べる。

その手に掴まり立ち上がったら、「迎えに来たよ」と言われた。


「雨が降り出して、外は寒い。雷も鳴っている。急に君が心配になってね」


彼の左手には羊毛のショールがあった。

それを私の肩に羽織らせて、人のよさそうな笑みを浮かべる。

私もショールは忘れずに持ってきて、玄関で使用人に預けたけれど、こっちの方がずっと温かいわ……。


恋心を自覚したばかりの私は、胸を高鳴らせて彼の優しさに頬を熱くする。

照れくささを感じて目を逸らせば、「迎えに来て正解だった」と彼は急に声の調子を下げた。

怒っているようにも取れる声色に驚いて、視線を戻せば、変わらず微笑みを湛える麗しき顔がある。

不機嫌そうに聞こえたのは気のせいかと思っていたら、レオン様が私の手から髪飾りを取り上げたので、私は慌てて釈明した。


「落としてしまい、申し訳ございません! レオン様からの賜物に傷をつけてしまうなんて、わたくしはーー」
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