悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
丁寧に扱わなかったことに腹を立てたのだと推測し、返せと言われるのではないかと焦っていた。

けれども彼はクスリと笑って私の髪を指で梳いて整え、銀のバラを横髪に留め直してくれた。


「謝らなくていい。それに、俺からの贈り物だからといって、必要以上に丁寧に扱われることも望んでいない」

「え?」

「傷つけやしないかと気にしていたら、使いにくいだろ? 君がこれを気に入って、たくさん使ったことで壊れたなら、俺はそれに感謝するよ。大切にしまっておかれるより、ずっと嬉しい」


ああ……なんて清らかな考え方をする人なの。

それに比べて私は醜い。アクベス母娘と罵り合った自分が、恥ずかしくなるわ……。


雨音が小さく耳に入ってきた。

周囲はざわつくこともなく、シンと静まり返っている。

彼が私の右手を自分の左腕にかけて、エスコートするように展示場の奥へと歩きだす。

彫像の周囲にはサロンの参加者全員が集まっていて、私たちに観察するような目を向けていたり、口に手をあて驚きの中にいる婦人もいた。

その集団を率いるように数歩手前に並んで立っているのは、アクベス侯爵家のふたりで、オロオロと目を泳がせ、かなり動揺している様子であった。
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