悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
私たちの会話が聞こえていたなら、散々けなした髪飾りの送り主が誰かに気づいたことだろう。

余計なことをしてしまったと、後悔しているのではなかろうか。

そして私がふたりにされたことを、レオン様に告げ口する気ではと、恐れているようでもある。

同じ花嫁候補者としての嫉妬や、焦りなどもきっと感じていて、母娘からレオン様に声をかけることはできそうにない様子であった。


ふたりの前で足を止めた私たちに、横から割り込むようにして声を弾ませるのは、フリント伯爵夫人だ。


「まぁまぁ、ようこそお越しくださいました。王太子殿下が当美術館をご訪問されますなんて、恐悦至極に存じますわ!」

「オリビア嬢を迎えに来ただけなのです。また今度改めて、ゆっくりと鑑賞させてもらいます」

「ぜひとも。お待ち申し上げております。ああ、なんて嬉しいことでしょう!」


フリント伯爵夫人は満面の笑顔で、ひとり浮かれている。

場の空気を読めない人だと言われがちではあるが、今ばかりはその存在がありがたく感じられるようで、他の参加者たちは緊張を解いた顔でこぞってレオン様に挨拶を始めた。

それに便乗して、アクベス母娘も時候の挨拶を口にしている。

しかしその笑顔は引きつっていて、私がいつ向こうにとって不利なことを言い出すかと、戦々恐々としている様子でもあった。

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