悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~

翌朝の八時を過ぎた頃。

私はレオン様に伴われ、ダービー場に足を踏み入れた。

王都の北西部の外れに位置するこのダービー場は、住宅地から少し離れた木立の中にある。

一周が五千フィートのコースの周囲には、階段状の観客席が設けられ、座ってレースの始まりを待っている人もいれば、交流に勤しむ貴族たちもいた。


門のほど近くに馬券売り場があり、その周囲は特に人で賑わっている。

やはり婦人たちの帽子は奇妙なほどに華やかだ。

フリント伯爵夫人らしき女性の姿を、観客席に見つけた。

彼女の帽子には名画を模した大きな飾りがつけられていて、ひと際目立っている。

ザッと見回した限り、私が一番地味なのではないだろうか。


腕に抱いているアマーリアの羽根帽子に合わせて、鍔広の深緑色の帽子には、二枚の羽根があしらわれたブローチをつけてきた。

襟元にファーのついた白いマントを羽織り、その中は帽子と同色の落ち着いたドレスで、あとは茶色のブーツだけ。

もとから装飾品をたくさん身につけるのは好まない性分ではあるけれど、今日は他の貴族の目になるべく止まりたくないという思いがあるため、特に控えめな装いでやってきた。

アクベス侯爵家の人たちに、見つからずにいられるかしら……。


残念ながら願い叶わず、オホホと耳障りな笑い声を斜め後ろの方向に聞いた。
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