悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
青い瞳が弓なりに細められる。


「今日は君のナイトを務めよう。オリビアはレースにだけ意識を向けて、それを楽しめばいい」


濃紺のマントを羽織った彼の腕が、私を守るように腰に回される。

私を気遣う優しい言葉と頼もしい腕に、思わず頬を熱くしたが、「王太子殿下、お久しぶりにございます」と彼に話しかける人が現れて、心にバラを咲かせるまでには至らなかった。


白く長い巻毛のかつらを被った初老の紳士は、ジャノグリー卿。

王家の遠縁にあたる人で、話し始めると止まらない少々困った特徴がある。

今も聞かれてもいないのにペラペラと、自身や家族について勝手に話しだし、私はまたかとうんざりする思いでいたが、レオン様は笑顔で受け答えをしている。

そこに不快感は微塵も感じられず、私は感心するばかりだった。


レオン様はやはり、誰に対してもお優しいのね。

それに比べて私は、ダービー場に着いてから二度も顔をしかめてしまったわ。


彼に相応しい花嫁になりたいのならば、自分を変えなければならないと、改めて感じていた。

辺境伯領に関する先祖の因縁や、王太子妃の座を巡る争いなど、アクベス家に対していい印象は持てないけれど、表面上だけでも円滑な交流を心がけねばならないのかもしれない。

たとえ心の中の憎しみを消せずとも……。

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