悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
また切なげな笑い方をする彼に、「そのようなことはございません!」と私は慌てて反論した。


「わたくしが変わりたいと思ったのですから、無理強いではありません。まだうまくいかないけれど、そのうちきっと、ロザンヌさんとも心からの笑顔で話せるようになりますわ。それがわたくしの望みなのです」


この心に染み込んでいる腹黒さを、完全に消し去る自信はないけれど、少しでもレオン様の求める女性像に近づきたいと思っていた。

それは紛れもない恋心で、恋愛事に必死になっている自分にハッと気づくと、急に恥ずかしさが込み上げてきた。

言葉を続けられなくなり、目を泳がせて熱い顔を背ける。

鍔広の帽子が顔を隠してくれてちょうどいいと思っていたのだが、彼に脱がされてしまった。


「キャッ」と驚きの声をあげて視線を戻せば、寒気のせいなのか、頬をわずかに紅潮させた彼が青い瞳を艶めかせていた。


「ねぇ、キスしてもいい?」

「こ、ここではいけませんわ!」

「そうだよね。残念だ。じゃあ、城に戻ったら、さくらんぼのように愛らしい君の唇を食べさせて」


色気のある声で甘く囁いた彼は、じっと私の唇に視線をとめている。


おそらく私の顔は、遠目でもわかるほどに真っ赤に染まっていることだろう。

入口に近いこの場所は、続々と到着する貴族や馬券を買い求める人々で混雑している。

ジャノグリー卿の姿はもう見えない。

少し離れた位置からついてくるレオン様の護衛の者がいる以外、幸いにも私達に注目している人は今はいないようだけど、私は恥ずかしくてたまらなくなった。

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