悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
はしゃいでいた気持ちは一気に冷えて、しまったと思っていた。

アクベス家の馬を下したと喜ぶ姿を見せては、向こうはいい気がしないだろう。

関係を修復するどころか、悪化させてしまったのではないかと危惧していた。


けれども母娘して私に笑いかけたから、意表を突かれた思いで目を瞬かせる。

「え……?」と呟いた私の声は、周囲の騒々しさに掻き消されて誰にも届かない。

ふたりは機嫌のよさそうな顔をして、そのまま私の横の通路を通り過ぎていった。


これはいったい、どういうことかしら?

ダービーは娯楽であり、持ち馬の勝敗は一喜一憂するほどのことではないと考えているの?


そうであるならば、胸を撫で下ろすところだけど、なにか違う気がしてならない。

ふたりの笑顔は、優越感に浸っているような、どこか得意げなものであった。

その意味するところは……。


考えても彼女たちの真意が読めず、ふたりの後ろ姿が人混みに紛れるのを、眉をひそめて見ていた。

すると隣から「勝負強いね。さすがはオルドリッジ公爵の馬だ」と話しかけられて、我に返る。

レオン様と視線を合わせれば、濁りのない瞳が弧を描いていた。

< 204 / 307 >

この作品をシェア

pagetop