悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
ドレスにマント、派手な帽子を被ったままで、ひとりの婦人が踏み台を使って馬に乗り、ダービー場の係の者が手綱を引いて、ゆっくりと馬を歩かせている。

なるほど。あれなら女性でも安全に乗れるわね。

そう理解して、私はレオン様に申し出た。


「わたくしも馬に乗りたいです」


本当は特に体験したいわけではないのだが、私が乗ればレオン様も乗馬を楽しめると思ったのだ。

彼は意外そうな目で私を見てから、微笑んで許可してくれる。

するとそこに、「王太子殿下」と呼びかける、聞き慣れた男性の声がした。

優雅な足取りで近づいてきて、私たちの前に立ったのは父だった。


「オリビアの面倒をみてくださって、誠にありがたく思います。乗馬をされるのでしたら、私が娘をそばに置きますが」


そう言った父に、私も乗馬を体験するつもりでいることを伝えたら、「へぇ」と含み笑いを返された。

父はいみじくも、私の心の変化と成長を感じ取ったのだろう。

以前の私なら、レオン様を気遣って、馬に乗りたいなどとは言いださなかったはずだから。


父の思惑通りに育った、この大きな恋心。

それを覗かれた気がして目を泳がせたら、父はクスリと笑い、今日のレースについて話題を変えてくれた。

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