悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
その後は父と別れて、私も乗馬をするべく移動する。

男性には馬を貸し出すだけでいいが、婦人が乗るには付きっきりとなるため、いつもより係りの者が多くいた。

それでも人手不足なのか、馬主が雇っているレースの騎手や馬番までもが手伝わされていた。


乗馬待ちの列には数人の婦人が並んでいて、私のすぐ前には船会社の経営者の夫人と娘がいる。

下っ端の貴族よりはよほど裕福で発言力もある豪商ではあるが、我が家には到底及ばず、即座に私に順番を譲ろうと声をかけてきた。

それを断ったのは、なるべく時間を稼いでレオン様が気兼ねなく乗馬を楽しめるようにと考えてのことだ。

遠慮した私に「そうでございますか」と背を向けたふたりは、それから声を落とさずに噂話を始める。


「今回、私たちも乗馬遊びができるのは、アクベス侯爵がご意見なさったかららしいわよ」

「そうなの。女でも楽しませてもらえるのだから感謝しなくてはいけないわね」


ふたりはなんの気なく話しているだけだと思われるが、私はアクベス侯爵の名に引っかかりを感じていた。

なぜか優越的な笑みを私に向けていたアクベス母娘の顔が思い出され、なにかがおかしいと懐疑的な思いが広がるけれど、それを消し去ろうとする意志も同時に働く。

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