悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
肘掛けにしがみつき、振り落とされないように必死になる。

悲鳴さえあげる余裕のない私に代わり、乗馬遊びに興じる婦人たちが甲高い声をあげていた。

馬は狂ったように頭を振って、体を揺らしながら、無茶苦茶に走り続ける。

私の体は何度も弾み、落馬の恐怖に青ざめた。


今は肘掛けを掴んでいられるけれど、私の細腕でいつまで持ちこたえることができるのか……。


アマーリアを放して両手で掴まるという選択肢はない。

落とせば陶製の顔が壊れてしまうからだ。

肘掛けを掴むのと同じくらいの力で、アマーリアの体を握りしめていたが、頭には“死”という文字が浮かんでいた。

私はきっともう駄目ね。

ああ、お父様、お母様。
レオン様……。


そのとき大きく揺れる視界の端に、黒いものが映り込む。

それはすぐに大きくなり、暴れ馬の隣には毛艶のよい黒馬が並んだ。

操るのはもちろんレオン様だ。

焦りを顔に浮かべる彼は左手で手綱を握りながら、私に右手を伸ばす。


「オリビア、俺の手を掴んで。こっちに乗り移るんだ」

「そ、そんなことできません!」


片手だけで彼の手にしがみつくことはできそうにない。

アマーリアを捨てて、自分だけ助かることもできない。

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