悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
同じ言語で会話しているはずなのに、彼の言葉がうまく理解できず、私は首を傾げそうになる。

『なにを言っているの?』と失礼な返事をしそうにもなり、その言葉を飲み込んでいたら、父が笑いながら歩み寄り、私の横に並んだ。


「殿下、相談というほどの深い話ではなく、よくある親子の会話です。どうかお気になさらず。娘から、王城の皆様には親切にしていただいているとの話を聞きました。感謝いたします」


そんな話はしていないと思いながらも、口を挟まずに黙っていたら、王太子は凛々しい眉をハの字に下げ、ばつの悪そうな顔で私と父を見比べた。


「親切に……ですか。それを言われると心が痛い。オリビアへの風当たりが強いという話を、五日前に聞きました。それから母と妹には、度々注意をしているのですが……」


王妃や王女の意地悪を知られていたことに、私は驚いていた。

五日前ということは、廊下で彼と鉢合わせた日だ。

あの時、悩みごとでもあるのかと尋ねられ、すぐに否定したというのに、誰かに指示して私の置かれている状況を調べさせたのだろうか。

それに加えて、注意をしてくれたという事実にも動揺している。

そんなことをしても、彼に得はない。

私より母と妹の機嫌を取るほうが、彼の暮らしは安寧なはずなのに、どうして……。

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