悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
そのとき執務室のドアがノックされ、廊下から「レオナルドです」という声が聞こえた。

ニヤリと笑う父は「ちょうどいいタイミングだな」と独り言のように呟いてから、私にドアを開けにいくよう命じた。

それに従いドアを開ければ、「公爵、例の橋の建造予備費で相談がーー」と言いながら片足を踏み入れた王太子が、「あれ?」と目を瞬かせて私を見た。


「オリビアがここにいるとは驚いたよ。公爵に甘えに来たのかい?」


この私がこの父に、甘えられると思って聞いているのなら、こちらのほうが驚くところだ。

美しくも男らしい端正な顔に、人懐っこそうな笑みを浮かべ、中に入ってきた王太子は後ろ手にドアを閉める。

それからよしよしと、この前の廊下で出くわしたときのように、大きな手で私の頭を撫でた。

その気さくさに戸惑いながら、「甘えに来たのではありません。相談していたのです」と答えれば、なぜか彼の笑みは自嘲的なものに変わった。


「俺にはなにも話してくれないのに、公爵には相談できるのか。父娘だから仕方ないとは思うけど、少し寂しいな」


寂しい? 私の相談相手が王太子ではなく、父であることが?

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