悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
銀糸のように見えたけれど、近づいて拾い上げれば別物だと気づく。

もっと細くて、長さは私の両手の五指を広げたくらい。

これは私の髪……いや、違う。この長さはちょうど、アマーリアの髪の長さだ。


ダービー場で手放した後、私のもとにアマーリアは戻ってこなかった。

誰に尋ねても、人形は落ちていなかったというのだ。

それでアマーリアは壊れた姿を私に見せまいとして、ひとり静かに神の御許に旅立ったのだと思うことにしていた。


そのアマーリアの髪が、地下へと向かう階段に落ちている理由はなにかしら……。


私はその髪を握りしめて、一歩、一歩、階段を下りていく。

アマーリアに呼ばれている気がしたのだ。


階段を下りきると、そこは地下二階。

廊下に明かりは灯されておらず真っ暗で、不気味さを感じていた。

引き返そうかと弱気な気持ちになるけれど、恐れを意志の力で封じ込めた。


私はこの先に進まねばならない。

そうでしょ? アマーリア……。


壁伝いに濃い闇の中を、前へと足を進める。

この地下二階に来たのは、レオン様に連れられて、王家の秘密の場所へと行ったとき以来のことである。

廊下が一度、直角に折れていたと記憶していて、その角までたどり着いて曲がったら、前方に薄っすらと明るさを感じた。

最奥のドアの下の隙間に、わずかに室内の明かりが漏れている。
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