悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
レオン様が消えれば、国王は血縁者を養子に迎えるかもしれないし、または公娼を城に迎えて新たに子をもうけるかもしれない。

王妃の不貞を明らかにする必要はなく、国内の動揺も一時的かつ被害を最小に食い止められる解決方法であると、彼なら考えそうな気がした。


レオン様のお命が……!!


強い焦りを感じた私は、手早く着替えてキャビネットからフード付きの厚手のマントを引っ張り出し、それを羽織った。

きっとこの屋敷の中の彼が立ち入りそうな部屋はグラハムさんが既に捜しているはずで、屋敷の外にいるのではないかと思ったのだ。


簡単な身支度をして、廊下へと飛び出す。

皆、寝静まっているのか廊下は無人で、照度を最小まで落とした燭台の明かりがポツリポツリと灯り、とても静かだ。

足音を抑えることにも気が回らない私は、廊下を走り、南棟の階段を一階まで駆け下りた。

玄関ホールに向かうべく、一階の廊下へと足を踏み出したそのとき、視界の端にキラリとなにかが輝いたので、気になって足を止めた。

右横の斜め下に振り向けば、地下へと向かう階段の最初のステップに、糸状のなにかが落ちている。


あれは、なにかしら……?

ここは四階までの吹き抜けの螺旋階段で、明かり取りの天窓から月光が差し込み、一本の糸を輝かせていた。

< 280 / 307 >

この作品をシェア

pagetop