悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
あそこは……隠し通路のある、六角形のあの部屋だ。

レオン様がそこにいるの!?


ドアに駆け寄った私は、ノックもせずにドアノブを回す。

幸いにも鍵はかけられておらず、ドアを開けて飛び込んだけれど、狭い室内に彼の姿はなかった。

代わりに私を待っていたのは、アマーリア……。


壁の燭台に火は入っておらず、丸テーブル上にランプがひとつ置かれていて薄暗い。

ランプの光を浴びるように、テーブル上に寝かされているアマーリアに近寄れば、陶製の顔はひび割れて、頬の一部は欠損していた。


暴れ狂う馬から落としたのだから、それは当然の結果で、わかっていたことだ。

それでもこうして目の当たりにすると、激しく心が痛んだ。

愛しき人形をそっと胸に抱いて、話しかける。


「アマーリア。あなたを壊してしまって、ごめんなさい……」


罪の意識はそのままに、けれども久しぶりの人形の感触と重みは、私の心を喜ばせてくれもした。

「お帰りなさい」と微笑んで、アマーリアの頬に口付けようとする。

そのとき、ハッと気づいた。

顔にヒビが入っているのだと思っていたけれど、破損状況がもっと酷いものであったということに。

< 282 / 307 >

この作品をシェア

pagetop