悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
私の迷いが見えているかのように、ビセットさんは「心配しなさんな」と深みのある声で言った。


「わしはこの通りの老いぼれだ。高貴な方々がうちの馬を借りにきたと言うても、信じる者はおらん。呆けたと思われるだけじゃろう。嬢ちゃんたちの行き先も、呆けた頭ではいつまでも覚えておられんよ」


まさか……私やレオン様が何者であるかを、知っているの!?

心臓を跳ねらせて目を丸くすれば、「さあ早く。急いでおるんじゃろ?」と促される。

その手に掴まり、馬上に引っ張り上げてもらった私は、スカートのままで馬に跨り、ビセットさんの腰に腕を回した。

初めて会ったとき、私はこの人を怪しんだのよね。愚かだったわ。ごめんなさい……。


私が方向を指図せずとも、ビセットさんは正しくまっすぐに目的地へと馬を走らせていた。

「なにもかもご存知でいらしたのですね」と声をかければ、しゃがれた笑い声を返される。


「いいや、知らん、知らん。似合わぬ村男の服を着て馬を借りにくるいつもの青年が、今日は随分と立派な格好をしておると思ったくらいじゃ。嬢ちゃんも同じだな」
< 287 / 307 >

この作品をシェア

pagetop