悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
青い瞳が驚きに見開かれ、それから苦しげに顔がしかめられる。

「オリビア……」とため息まじりに私の名を呼ぶ声に力はなく、どうやら観念した様子であった。


「君の命まで奪えない。どうやら俺は、死んではいけないようだ……」


彼がサーベルを離してくれたので、私は数歩走って、それをできるだけ遠くに投げ捨てる。

そうするとやっと指に痛みを感じて、私は小さな呻き声をもらした。


追ってきたレオン様が私の肩を抱いて、「手当をさせてくれ」と切なげに言う。

そして奥にある雪を被った小さな屋敷に、そっと私をいざなった。


それから三十分ほどが経ち、薪が燃える暖炉の前に私たちは並んで床に座り、体を温めている。

お尻の下には鹿の毛皮を敷いているので、椅子に座るよりも暖かくて快適だ。

指の傷はいくらか痛みはあるものの、包帯を巻いてもらって血は止まり、動かさなければ問題なさそうだ。


私は今、彼に肩を抱かれながら、離宮を出た後に森の中で国王に出くわしたことを話している。

国王は、王妃の不貞も、レオン様が自分の子でないことも、なにもかも承知の上で知らないふりを続けてきた。

『血筋などどうでもよい』と口にして、レオン様のことを『自慢の息子だ』と言ったのだ。


「国を統べる者にとって最も大切なのは、民と領土を守ることのできる力なのだそうです。それを有するあなたを息子に持ったことを、誇りに思うとも仰いましたわ」

「父上が、そのようなことを……」

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