悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
必死の思いで止めたため、力加減などできはしない。

両手の指の関節に刃が食い込んで、溢れ出した血が滴り落ちる。

白き世界が点々と赤く色付くと、彼がハッと我に返ったような顔をして、やっと私の存在に気づいてくれた。


「オリビア!? なにをしている、早く手を離すんだ!」


目を見開き、声を荒げ、私を遠ざけようとする彼。

しかし、力尽くで私の手からサーベルを引き抜くことはできずにいる。

そんなことをすれば、私の両手の指先がなくなることをわかっているからだろう。


「指がーー」と心配する彼に、私は真剣な顔をして「離しません!」と言い放つ。


「死ぬおつもりでしたら、わたくしもお供いたします。この剣をお貸しください。まずはわたくしから自害します」

「なにを言う!? オリビアが死なねばならない理由はない!」


語気を強め、瞳を厳しくする彼に叱られても、私の決意は揺るがない。

指の痛みなど感じられないほどに必死だった。

彼からサーベルを奪おうと、ますます両手に力を込めて「理由ならありますわ!」と反論する。


「愛しているからです。もし間に合わずにあなたが命を絶っていたら、わたくしもすぐに後を追うつもりでした。あなたが行く所は、どこへでもついていきます。命を賭けるに値する愛を教えてくださったのは、レオン様ですわ!」
< 291 / 307 >

この作品をシェア

pagetop